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> 「清きアイーダ」
豪華絢爛オペラのステレオタイプであるヴェルディ作曲の「アイーダ」。
中学生の音楽の教科書にまで載った、イタリアオペラの代表作である。

余談だが、私が学生のころの教員採用試験に、
「アイーダのあらすじを書け」と言うのがあったが、
ほかの学部の生徒にはかなり酷な問題であった…。

その「アイーダ」の最大の見どころは、
第2幕2場の勝利の凱旋行進とそれに続くバレエ。
「これぞオペラ!」と言わせるほどである。

しかし凱旋行進とバレエを合わせても、たったの6分15秒…。
2時間半のオペラの中では、ただのワンシーンにすぎないのだ。

実は「アイーダ」とは、
ドロドロの三角関係、三つ巴の人間関係を描いた
「昼のメロドラマ」なのである!
ただ舞台が古代エジプトに移っただけなのだ。

1人の男をめぐって対立する、2人の女。
父を助けたい、でもそれは彼を裏切ることになると苦悩する女。
愛する男を死に追いやってしまう女の苦しみ。
死を共にすることで結ばれる男女の愛。

主婦が好きそうな話が盛りだくさんである。

昼メロに例えると「アイーダ」の凱旋行進の場面とは、
主役である大物女優が、旦那の愛人に向かって、
「この泥棒猫!」と罵っている、非常に緊迫したシーンの後、
突然、コマーシャル・イン。

「アクロンなら毛糸洗いに自信がもてます…」

と、コミカルな音楽が流れてくるようなものである。
食い入るようにテレビを見ていた主婦も、
その時ばかりは、ソファーに深く腰掛け、
つい煎餅に手を伸ばしてしまう…。

これが第2幕2場の役割なのである。

夕方、買い物に出かけた主婦の頭に浮かんでくるメロディー。

「アクロンなら毛糸洗いに自信がもてます…」

あ、そうよ!アクロン買わないと…。

スポンサーの思惑通りなのだ。
緊張の後に生まれる「インプリンティング」。
インパクトのあるメロディは、私たちの耳に強烈に残ってしまう。

おそらく「アイーダ」を見たあと、
私たちの頭の中には、凱旋行進曲が流れているに違いない。

まさにヴェルディの思惑通りなのだ。
by scalaza | 2006-12-13 01:56

川倉 靖(かわくらやすし)氏による2009-10年スカラ座オペラのブログです。
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